新翻訳事業について

聖書事業懇談会 新しい聖書翻訳の課題と展望 樋口 進氏

樋口 進氏
2014年5月22日
於:毎日インテシオ

Ⅰ、聖書翻訳の歴史

歴史において、多くの聖書翻訳の事業がなされてきましたが、そのごく一部を紹介しましょう。

  • a)七十人訳(LXX)
    紀元前3世紀にヘブライ語の旧約聖書がギリシア語に翻訳されましたが、そのいきさつが偽典の「アリステアスの手紙」伝えられています。それによりますと、エジプトのアレキサンドリアに72人(各部族より6人ずつ)の学者が集められ、72日でトーラー(律法)がギリシア語に翻訳された、ということです。その当時、アレクサンドリアのユダヤ人はヘブライ語が読めなくなっていたからです。その後、紀元1世紀までにトーラー以外の書も順次訳されていったということです。キリスト教では、もっぱらギリシア語訳で旧約聖書が読まれました。
  • b)ウルガタ(ラテン語訳)
    これは、現代に至るまでローマ・カトリック教会の公認聖書です。ヒエロニムスが紀元4世紀後半より5世紀初頭にかけて旧約聖書をヘブライ語から、新約聖書をギリシア語から翻訳しました。一時期、ベツレヘムの洞窟にて翻訳の仕事を集中して行った、ということです。これは優れた翻訳として定評がありますが、誤訳もありました。出エジプト記34:29で、「モーセの顔が光を放っていた(ヘブライ語でカーランという語)」というのを「顔に角(ヘブライ語でケレンという語)が生えていた」と訳しました。そこで、ミケランジェロの傑作である「モーセ像」には、角が二本生えています。
  • c)ルター訳
    マルティン・ルターは、1517年に宗教改革を起こし、1521年にヴォルムスの国会に喚問され、身の危険が迫りましたが、ワルトブルグ城に保護されました。その時彼は、一般民衆がドイツ語で聖書を読めるように、新約と旧約をそれぞれ原典からドイツ語に翻訳しました。これは瞬く間にドイツ中に普及し、大きな影響を与えました。ルター訳ドイツ語聖書は、現在でも広く使われています。
  • d)The King James Version(KJV、欽定訳)
    1607年に英国王ジェームズⅠ世の命により54人の改訳委員が選ばれ、分担翻訳し、1610年に完成し、1611年に出版されました。格調高い英語で表わされ、非常に普及していますが、翻訳上の問題も多く、1983年に改訂版が出されました(New King James Version)。
  • e)Revised Standard Version(RSV)(改訂標準訳)
    カナダとアメリカの40の主な教派が委員会を形成して作られたもので、新約が1946年に、旧約が1952年に、全訳が1957年に完成しました。当時の最高の学識によったもので、名訳とされています。また、これを現在の聖書学の成果を取り入れて、全面改訂した版が1990年に出されました(New Revised Standard Version)。
  • f)New International Version(NIV))
    「保守的な福音派の共同体のための現代語訳」と言われ、1978年に全訳が出されました。インターナショナルというのは、翻訳者が世界中の英語圏から招聘されたことによります。保守的でありながら、優れた学究と現代的な文体であり、荘重な響きももつものとして定評があります。
     定評のある注解書のInterpreter's Bible(IB)は、KJVとRSVを、New Interpreter's Bible(NIB)は、NRSVとNIVをテキストに掲げています。
  • g)日本語訳
    • ①ギュツラフ訳:1835年、ドイツ人宣教師ギュツラフが日本人漂流民(岩吉、久吉、音吉)の助けによって作られた日本語最古の聖書です。ヨハネによる福音書の冒頭は、「ハジマリニ カシコイモノゴザル、コノカシコイモノ ゴクラクトモニゴザル、コノカシコイモノワゴクラク」と訳されました。
    • ②聖書協会出版のもとしては、文語訳が1887年(明治20年)に、口語訳が1955年(昭和30年)に、新共同訳が1987年(昭和62年)に出されました。
    • ③その他の日本語訳としては、岩波訳聖書が2007年に、新改訳聖書の第3版が2003年に、フランシスコ会訳聖書が2011年に出されましたが、それぞれ特徴のあるいい翻訳聖書だと思います。
  • 前のページへ
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
このページに関するお問合せは
一般財団法人 日本聖書協会 翻訳部
〒 104-0061  東京都中央区銀座 4-5-1
TEL.03-3567-1989  FAX.03-3567-4436  E-mail. transl@bible.or.jp

ページの先頭に戻る

1997-2014(c)Japan Bible Society, Allrights reserved.  当サイトに掲載されている情報の無断転載を禁止します。