新翻訳事業について

聖書事業懇談会 新しい聖書翻訳の課題と展望 樋口 進氏

樋口 進氏
2014年5月22日
於:毎日インテシオ

Ⅲ、新共同聖書訳の問題点

これは、20世紀のエキュメニカル運動の流れの中にあって、カトリックとプロテスタントが共同して訳したということが高く評価されます。そして、日本の多くの教会の礼拝で使われています(大体70%位の教会で)。しかし、訳語・訳文に関して、特に研究者から批判も多くあります。『日本の神学』第30号の特集では、かなり厳しい批判も出っされました。それには、途中で方針が変わったこともあります。すなわち、最初は「動的等価」と言って、原文が意味しているところを現代の日本語へとダイナミックに訳すというものでした。そして、その方針で訳されたものを1978年にパイロット版として出しました(『新約聖書 共同訳』)。しかしこれは、かなり不評でした。例えば、書名が「マタイオスによる福音書」とか「ルカスによる福音書」となったり、固有名詞が「イエスス」とか「パウロス」など原音に近い表記になったり、マタイによる福音書5:3が「ただ神により頼む人々は、幸いだ」と訳されたりしました。しかしこれは、あまりにも原文から離れているということで、新共同訳では原文に忠実に「心の貧しい人々は、幸いである」となりました。「動的等価」から、原文に忠実にというふうに途中で方針が変わりましたが、すでに作業がかなり進んでいましたので、前の訳がそのまま残ってしまったと思われるものもあります。例えば、エレミヤ書22:15では「あなたの父は、質素な生活をし」と訳されていますが、「あなたの父は、食い飲みし」というのが原文の直訳です。「食い飲みする」というのを、「質素な生活をする」と理解したのでしょうが、少し無理があります。説明的な訳語も多く、ラシャー(悪人)を「神に逆らう者」とツァディーク(義人)を「神に従う人」と訳されました。また、ミシュパートとツェダーカー(公正と正義)を「正義と恵みの業」と訳されたりしました。

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