新翻訳事業について

日本聖書協会 講演会 原文の味・訳文の味 柊 曉生氏

柊 曉生氏
2015年3月6日
於・フクラシア東京ステーション

(C) 言葉遊びなど:ヘブライ語のカタカナ表記

旧約聖書では、特に人名や地名の語源に関して、語呂合わせなどの言葉遊びが多く出てきます。以下は出エジプト記2章10節の例です。

「王女は彼をモーセと名付けて言った。『水の中からわたしが引き上げた(マーシャー)のですから。』」(新共同訳)
「彼女はその名をモーセと名づけて言った、『水の中からわたしが引き出したからです』」(口語訳)

口語訳聖書は本文の翻訳だけですので、そのもとになっているヘブライ語の語呂合わせがわかりませんが、新共同訳聖書は、翻訳のあとにそのヘブライ語をカッコの中に記していますのでそれがよくわかります。新しい翻訳聖書は、翻訳の本文にではなく、脚注欄の「本文注」にそれを注記して、本文をなめらかに読みやすくするように考えています。

ただ、モーセ(人名)とマーシャー(引き上げる)を語呂合わせで結びつけていますが、これは無理なこじつけです。と言いますのは、「モーセ」という名前は元来エジプト語であり、「引き上げる」という動詞はヘブライ語であり、違う外国語でもって説明しているからです。モーセの名前は、エジプトの王、ラムセス(ラーの子)やトトメス(トトの子)のメス「子」(ms)と関連すると言われています。またモーセは「引き上げられる者」であり、「引き上げる者」ではありません。こうしたことは、「本文注」の域を超えていますので、注解書などを見てもらうほかはありません。

おわりに

「どうしてわたしたちは、めいめいが生まれた故郷の言葉を聞くのだろうか。」(使徒言行録2章8節)

使徒言行録2章には、五旬祭の日に弟子たちが聖霊に満たされ、霊が語らせるままに他の言葉で話し出すと、皆自分の故郷の言葉が話されているのを聞いたという記事があります。これはアンチ・バベルの塔の物語で、いろいろの言葉が話されているのを聞いても理解できたという話です。ここで大事なのは霊の働きです。

聖書の翻訳においても、「いかなるたつとききやうをも、かかれたるすぴりつをもてよむべし」と「こんてむつすむん地」(「キリストにならいて」)に書かれているように、「すぴりつ」(Spiritus:霊)をもってまず第一にのぞむことが大切であり、霊に導かれてこそ書物(Bible:聖書)に生命の息吹が宿ることでしょう。

このページに関するお問合せは
一般財団法人 日本聖書協会 翻訳部
〒 104-0061  東京都中央区銀座 4-5-1
TEL.03-3567-1989  FAX.03-3567-4436  E-mail. transl@bible.or.jp

ページの先頭に戻る

1997-2014(c)Japan Bible Society, Allrights reserved.  当サイトに掲載されている情報の無断転載を禁止します。