新翻訳事業について

日本聖書協会 講演会 「それでも新聖書翻訳」 津村 春英氏

津村 春英氏
2015年4月10日
於・梅田スカイビル・タワーイースト

はじめに

新共同訳聖書にやっと慣れたのに、なぜ今、新しい翻訳聖書が必要かという声を聴く。そういう新共同訳も世に出て早30年を数えようとしている。『NHK新用字用語辞典』の巻頭に、「“ことば”は生き物です。」とあるように、日本語は日々変化している。30年という年月は、次世代の人々に向けて、訳本を見直すのに十分な根拠を与える年数と考えられる。

他方、この間に委員会訳の新しい邦訳聖書や改訂版が登場したが、それらの底本としているネストレ=アーラント・ギリシア語新約聖書が2012年秋に、ドイツ聖書協会からに改訂28版として出版された。とりわけ公同書簡の本文については、34個所の本文の変更が見られる(この「序文」は筆者訳で2013年12月に日本聖書協会より出版されている)。さらに、ここ数十年間の神学的営みから得られた果実が聖書翻訳の中に生かされなければならないと考える。今回の新翻訳聖書はスコポス理論に則り、礼拝(典礼)に使用することをその目的としている。

今年の聖書事業懇談会の講演の主題は、昨年に引き続き、「どんな翻訳になるのですか?」―新しい聖書の特徴Ⅱ―としている。新約聖書の一部の翻訳と編集委員を委嘱されている立場から、筆者は、「それでも新聖書翻訳」と題して、新しい聖書翻訳の具体的な聖書箇所のいくつかについて、従来の諸訳の問題点を指摘しながら以下に説明したい。ただし、現段階では、最終的にどういう訳になるかについては詳細に提示することができない。なお、全体のボリュームを考慮しながら、本文批評上の別訳や必要最小限の説明を加えることが、使用者に親切でやさしい聖書になると考えている。

本論

新約聖書において、翻訳上問題となる個所や興味ある個所のいくつかについて、以下にその要点を示す。なお、まずは新共同訳、新改訳、口語訳、文語訳を併記し、他の訳も参照する。略記として、新共:新共同訳、新改:新改訳、口語:口語訳、文語:文語訳、フラ:フランシスコ会訳(2013)、岩波:新約聖書翻訳委員会訳、田川:田川建三訳、NA:ネストレ=アーラント・ギリシア語新約聖書などを用いる。

1.本文批評上からいくつかの例

最近の新約聖書の邦訳は、ネストレ=アーラント・ギリシア語新約聖書(NA)と同じ本文の世界聖書協会新約聖書(UBS)を底本とし、NAは28版(NA28)、UBSは5版(UBS5)が最新のものである。一昨年に出版されたNA28は、新約聖書大型批評版 Editio Critica Maiorの研究成果から、公同書簡の本文に34個所の変更を採用している。ただし、新共同訳聖書で、以前の底本に必ずしも準拠していなかった個所が実際には存在していた。ここでは本文批評の違いから生じる個所をまず取りあげる。

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