新翻訳事業について

聖書事業懇談会 新聖書翻訳の魅力―旧約詩文学を実例として― 小友 聡氏

小友 聡氏
2016年3月4日
於:大会議室(名古屋市)

(3) 雅歌1:9-11

<新共同訳>

  1. 恋人よ、あなたをたとえよう
    ファラオの車をひく馬に。
  2. 房飾りのゆれる頬も
    玉飾りをかけた首も愛らしい。
  3. あなたに作ってあげよう
    銀を散らした金の飾りを。

<新訳(案)>

  1. 恋人よ、わたしはあなたを
    ファラオの戦車隊の雌馬にたとえよう。
  2. 頬飾りが揺れるあなたの頬も
    首飾りをかけたあなたの首も麗しい。
  3. 私たちが、銀をちりばめた金の首飾りを
    あなたに作ってあげよう。

雅歌の新共同訳は、体言止めを多く用い、詩文としてキレのある訳し方をしています。そのために、どうしても省略や簡略化が目立ちます。新訳は、それをもう少し原典に近づける努力をしています。9節の「ファラオの車」(新共同訳)はファラオの戦車(二頭馬車か三頭馬車)のことで、しかも複数ですから、新訳では「ファラオの戦車隊」と訳されます。「馬」(新共同訳)も原典通り「雌馬」と訳されます。戦車をひくのは雄馬ですが、その中に雌馬がいるとすれば、雄馬たちは興奮状態になって大混乱に陥ります。恋人(女性)がそれほど際立った存在であることを新訳はきちんと表現しました。また、11節の主語は「わたしたち」ですから、それも新訳は正確に表現しています。雅歌は単なる世俗的恋愛歌と解釈されることがありますが、正典として教会できちんと読まれるべき書です。何よりも礼拝において違和感なく読まれることが望まれます。新共同訳と比べて、皆さんは新訳をどう評価するでしょうか。

(4) 雅歌2:7

<新共同訳>

エルサレムのおとめたちよ
野のかもしか、雌鹿にかけて誓ってください
愛がそれを望むまでは
愛を呼びさまさないと。

<新訳(案)>

エルサレムの娘たちよ、
ガゼルや野の雌鹿にかけて、わたしに誓ってください。
愛が望むまで、目覚めさせず、揺り起こさないと。

新共同訳に慣れ親しんだ者にとっては、手直しをしたくない聖句ですが、先ほど指摘したように、新訳では「かもしか」は「ガゼル」と訳されます。また、「愛を呼びさまさない」は、原文通り、動詞を否定形で二つ繋ぎ、「目覚めさせず、揺り起こさない」と新訳では訳しました(3:5, 8:4も同様)。礼拝で朗読される場合にも、受け止められる訳文ではないでしょうか。

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