ソーシャルディスタンスが求められる社会

2020年(令和2年)4月7日(火)、新型コロナウイルス感染拡大の状況を踏まえ、「緊急事態宣言」が発令されました。海外のいわゆる「都市封鎖(ロックダウン)」とは異なり、活動の制限・休止・中止要請のもとでの「自粛」が求められたのです。ほとんどのキリスト教会は、礼拝や集会活動を一時休止し、他国と同様に、人々は今年のイースター(復活祭)を自宅で祝うことになりました。その宣言が約1か月半を経て、5月25日(月)に全面解除となりました。

内閣府発信・安倍総理大臣記者会見記録:
https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/statement/2020/0525kaiken.html

自粛の日々が続き、不安・焦燥感・意欲の減退などの症状を覚えた方が多くおられます。また、中小企業の経営者や、社員には、ビジネスや仕事を失う危機に瀕している方々もおられます。全面解除の号令によって問題は解決されず、ここから解決に取り組まなければならない現実があるのです。

この緊急事態宣言下で「聖書協会世界連盟(United Bible Societies/略称UBS)」のウェブ会議が行われ、「コロナ禍下で、緊急的支援を必要としている国が25か国、今後2〜4か月の間に財政危機に直面する国が75か国ある」と報告されました。UBSは緊急の通知を出し、「現在行われている聖書普及事業の調整を行いながら、『緊急募金(Solidarity Fund)』を募り、経済的な危機にある聖書協会を救済しよう」と、祈りの輪が広がっています。今後の動きは、日本聖書協会募金部から発信して参ります。

さて、世界では「コロナ後の世界はどうなるのか」という問いが提示されています。そこで頻繁に登場する言葉に「ソーシャルディスタンス(社会的距離)」があります。2004年に出版された『境界線(バウンダリーズ)』H.クラウド&J.タウンゼント著(地引網出版)というベストセラー書では、人間関係における適切な距離感を説いており、示唆に富むものでした。
人と人との距離感がとても重要な意味を持つ−。コロナ後は、物理的(または身体的)距離の確保が求められる社会になります。通勤・買い物・レストラン等で、すでに実践されていますが、徐々に人間関係にも及ぶことになるのでしょう。きちんと意識的に相手を思いやって距離をとる、コミュニケーションのあり方まで影響していくことでしょう。さまざまな場面で、自問自答しながら行動することになります。

「兄弟愛をもって互いに深く愛し、互いに相手を尊敬し、怠らず励み、霊に燃えて、主に仕えなさい。」(ローマ12:10-11)

距離を置くことで、離れすぎる(疎遠になる)ことも同時に避けなければなりません。私たちはみな共に生きる存在であり、「共生・協力・隣人愛」はキリスト教信仰の本質でもあるからです。コロナ後の時代においては、愛する家族・仲間・隣人を適切に意識して、適度な距離を保つ。そのようなノウハウを学んでいきたいと思います。

主の平和。

2020年5月28日