創立75周年を迎える「聖書協会世界連盟(United Bible Societies)」

日本聖書協会の最大の強みはグローバルなネットワークと相互協力にあります。その中核を担っているのが「聖書協会世界連盟(United Bible Societies=UBS)」です。

1960年代のUBSの働きを記念したデザイン画
1960年代のUBSの働きを記念したデザイン画

歴史を遡ると、世界で最初の聖書協会は1804年に創立された現在の英国聖書協会(British and Foreign Bible Society=BFBS)です。その後BFBSなど西欧諸国の聖書協会を中心にさまざまな国で聖書普及事業が進められました。当時はそれぞれ自主独立の形で運営されていましたが、1939年オランダ聖書協会の呼びかけで13の聖書協会の代表者が集まり、聖書普及事業のための協力機関設立の話し合いが始まりました。

けれども、その発案は1939年9月にドイツ軍のポーランド侵攻により、一度途絶えます。そこから第二次世界大戦へ。危機の中でも聖書協会は聖書を印刷し頒布を細々と続けていました。戦争は1945年に終結。その一年後の1946年の5月9日に、再度13の聖書協会の代表者が英国のヘイワーズ・ヒースに集い、聖書協会世界連盟を設立しました(写真)。その日から数えて今年で75年となります。1983年には5月9日は「聖書協会世界連盟祈祷日=UBS DAY」と定められました。

2020年のUBSの統計によると、現在約150の聖書協会が協力して240の国と地域で、聖書協会の働きが繰り広げられています。コロナ禍の影響を受け、数多くの聖書協会は経済危機に接しています。今年から「UBS連帯基金(Solidarity Fund)」を呼びかけ、厳しい状況にある聖書協会を援助しています。詳細は募金部の【いのちの糧】をお読みください。

聖書は古代から受け継いできた人類の遺産です。学術的・歴史的研究を深め、それぞれの言語の現代語に翻訳し、出版や商品開発を行い、教会と一般の方々を含むすべての人々にお届けする、それが私たち聖書協会のミッションです。そして、その同じ志をもつ仲間(組織)をつなぎ合わせるのがUBSの働きです。議長であり、1875年に日本において聖書協会としての事業を開始した聖書協会の一つであるスコットランド聖書協会のエレイン・ダンカン総主事のUBS創立75周年に寄せたメッセージ動画を掲載しますので、ぜひご視聴ください。

●聖書協会YouTubeチャンネル:  
https://www.youtube.com/channel/UCVhbmBz6YNCu47CtTBnp6vA

聖書普及事業において、私たちはこれまでの働きを祝福してくださった神への感謝を表しつつ、今後のさまざまな課題にUBSに連なる仲間たちと共に取り組んでいきます。どうぞお祈りをお願いいたします。

主の平和

2021年4月1日


聖書協会世界連盟の70年にわたるおもな働き(1946年-2016年)

1946年 聖書協会世界連盟(United Bible Societies: UBS)設立
場所:ヘイワーズ・ヒース(イングランド)
第2次世界大戦の惨禍から立ち直る「精神的なニーズを満たす圧倒的な緊急性」に応えるため、聖書協会の代表者らによって設立された。
1947年 最初のUBS翻訳者会議 於:ウッズショーテン(オランダ)
聖書翻訳に「その言語を母国語として話すネイティブスピーカー」を増やす必要性が議論された。
1954年 第1回UBS総会 場所:イーストボーン(イングランド)
英国聖書協会が設立150周年を迎えた。
1960年 『スペイン語 聖書 Reina-Valera1960改訂版 』を発売。2年間で200万部以上を売り上げ、ラテンアメリカで最も広く使われる版となった。
1963年 UBS総会 場所:箱根(日本)
テーマ「新時代のための神の言葉」
頒布目標を達成するため、UBSは史上初となる同テーマでのキャンペーンを開始。
1965年 「聖書への容易なアクセス」を呼びかけた、「Dei Verbum」(神の啓示に関する教義憲章)が第二バチカン公会議で公布された。結果、ローマ・カトリック教会とUBSとの間に、前例のない協力関係が生まれた。
1966年 UBS総会 場所:バックヒルフォールズ(アメリカ)
アメリカ聖書協会が創立150周年を迎えた。アメリカ聖書協会が初の共通語の新約聖書『Good News for Modern Man』を出版、5年間で3,000万部を販売した。1976年に旧約・新約完全版の『Good News Bible』が出版され、多くの言語での共通語訳の流行のきっかけとなった。
1968年 UBSが初の「世界に寄与する予算」を制定。
“仕事は一つ、お金も一つに!” プレマナンド・マハンティUBS世界議会議長
1972年 UBS総会 場所:アディスアベバ (エチオピア)
音声聖書、新書版聖書、青少年が優先課題。「70年代の前進プログラム」が採択された。
1973年 韓国聖書協会(KBS)がUBS聖書製作センターとなる。40年間で100か国以上に1億冊の聖書を印刷した(2001年にはBible Korea Co.製本所を開設)。
1973年 韓国聖書協会(KBS)がUBS聖書製作センターとなる。40年間で100か国以上に1億冊の聖書を印刷した(2001年にはBible Korea Co.製本所を開設)。
1980年 UBS総会 場所:チェンマイ(タイ)
テーマ 「すべての人に開かれている神の言葉」
「80年代のためのプログラム」が立ち上がった。主な議題は、宗派間の活動、新しい読者のための聖書、ガイド、研究、資金調達など。
1983年 5月9日をUBS創立日と定めた毎年恒例のUBS Day of Prayerがスタート。
1984年 より多く、より優れた聖書関連素材を子供や若者に提供するUBS Youth Program開始。
1987年 文化大革命後の中国における聖書の膨大なニーズに応えるため、UBSとアミティ財団の共同事業として設立されたアミティ印刷会社で、最初の聖書が印刷された。2015年までに、中国のクリスチャンのために7,200万冊の聖書が印刷され、さらに輸出用に7,200万冊の聖書が印刷された。
1988年 UBS総会 場所:ブダペスト(ハンガリー)
テーマ「神の言葉:すべての人に希望を」
初の「次世代代表団」が参加。2000年までに若者や新しいクリスチャンにリーチするための具体的な目標が設定された。
1990年 ソビエト連邦の崩壊後、UBSは中・東欧および旧ソビエト連邦諸国への開発プログラムを開始。1990年から1996年にかけて、旧共産圏に23の聖書協会が新たに設立され、数千万冊の聖書と子ども用聖書が頒布された。7億3,900万冊の聖書が頒布され、1年間の頒布数としては過去最高となった。
1995年 「神学的な専門用語を避けた読みやすいバージョン」として、CEV(Contemporary English Version)現代英語版聖書がアメリカ聖書協会から出版。ブラジル聖書協会が聖書印刷工場を開設。16年間で100か国に対し1億冊の聖書を印刷した。
1996年 UBS世界大会 場所:ミシソーガ(カナダ)
テーマ「神の言葉:すべての人の命」
UBS創立50周年を祝った。
1997年 聖書翻訳ソフト「ParaText」をUBSが開発。これによって以後の翻訳において、作業の迅速な進行、品質や一貫性の向上に大いに貢献した。
2000年 UBS世界大会 場所:ミッドランド(南アフリカ共和国)
テーマ「神の言葉:世界への光」
聖書との深い関わり、関係性を意味する「バイブルエンゲージメント(聖書活用)」を初めて取り入れた、新しいUBSステートメントが採択された。
2001年 聖書協会の活動促進のため、アメリカ聖書協会とマクレラン財団から3,000万ドルの資金提供を受け、「オポチュニティ21」プログラムがスタートした。2005年プログラム終了時には、総額5,600万ドルの資金を得て、聖書協会全体で何百もの新しいプロジェクトが生まれた。
2002年 UBSは、聖書に基づいたHIV/AIDS教育プログラム「良きサマリア人プログラム」を世界的流行への対応として開始。2014年までにアフリカの約20か国で実施され、毎年何十万人もの人々を支援している。
2002年 37の聖書協会の代表者が、教皇ヨハネ・パウロ2世との謁見に招待された。
“聖書協会は、聖書の無尽蔵の豊かさを開くために、耳を傾けるすべての人に存在する。それは崇高なキリスト教の奉仕であり、私は神に感謝している” 教皇ヨハネ・パウロ2世
2004年 UBS世界大会 場所:ニューポート(ウェールズ)
テーマ「変わらない神の言葉を変化する世界に」
英国聖書協会が創立200周年を迎えた。
主な議題は、若者、グローバル化、読者層の調査。
世界の聖書協会で、活動開始200周年を祝う。
2007年 資金調達の改革。聖書協会の運営予算として資金が無指定で割り当てられていた時代を経て、2007年からプロジェクトベースの新しい資金調達システムが導入された。
2010年 UBS世界大会 場所:ソウル(韓国)
テーマ「神の言葉:世界のための命」
ソウルステートメントでは、研究、宗派間交流、パートナーシップ、若者との関わり(エンゲージメント)などの必要性が強調された。また、UBSと正教会の間で覚書が交わされた。
2011年 UBSは、地域オフィス、エリアオフィス、委員会などを廃止し、新しいガバナンス構造「RENEW」を導入した。識字率向上のための活動が評価されたUBSは「UNESCO協議的パートナーシップを結んだNGO」と認可された。Digital Bible Library®の運用が開始され、聖書協会やその他の聖書関連機関が著作物を安全に保管し、アプリやウェブサイトでの著作権を管理できるようになった。
2013年 UBS初のミッション・リソース・センター「Trauma Healing Institute」を開設(主催:アメリカ聖書協会)。聖書翻訳キャンペーン「100冊の聖書を1,000日で」を開始。
2014年 UBSのミッション・リソース・センター「International Bible Advocacy Centre」を開設(主催:英国聖書協会)。UBSとSILの共同事業となったPara Textの登録ユーザー数は9,500人を超えた。
2015 Digital Bible Library®は、40億人が使用する957の言語、1,201冊のテキストを所蔵。130以上の聖書協会やその他の聖書関連機関がテキストを保存している。DBLには145の音声聖書も収録。
UBSのミッション・リソース・センター「Scholarly Editions」を開設(主催:ドイツ聖書協会)。
ブラジルでポルトガル語によるUBS聖書アプリのパイロットプロジェクトが開始。短期間で月の平均ダウンロード数が7,000件に達した。
2016年 UBS世界大会 場所:フィラデルフィア(米国)
テーマ「神の言葉:すべての人の生ける希望」
UBSの聖書アプリが90以上の聖書協会に12の言語で提供開始。聖書協会が聖書を中心としたデジタルコミュニティを創ることを支援する「プロジェクト・エンゲージ」を開始。